解体ショー

著:星新二

 ここは、F国でも有数の人気大型スーパー。今まさに夕方のタイムサービスが始まろうとしている。
「タイムサービスが始まるよ。今日の目玉は迫力満点の解体ショーだよ!さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
 店員の威勢のいい声に引き寄せられるように、客が続々と集まってくる。
「さて、最初は頭からきるよ」
 そう言うと、店員は商品の頭めがけて思いきり包丁を振り下ろした。包丁は見事に命中し、頭はあっさりと胴体と切り離された。
「新鮮だねえ。これなら刺身にしても十分おいしいよ。さあ、お次は胴体だ・・・」
 店員は、赤身、中落ち、中トロと手際よく解体していき、ついに大トロまでたどり着いた。
「いよいよ大トロだよ。この大きなお腹に油がたっぷりつまってるんだなあ」
 そう言って、店員は商品のお腹にざっくりと包丁を入れた。すると、中からはたっぷりと脂ののった大トロが姿を現した。ところどころどす黒くなっているのが最高級の証である。
 解体もクライマックスにさしかかった時、最前列で見ていた客が、
「買った!」
 と叫んだ。
「さあ、まずは一人お買いあげだ。ほかにほしいお客さんはいるかい?」
 と店員が言うと、たくさんの客が手をあげ、すべての部位は無事完売した。
 解体ショーが終わったあと、一人の客が店員に言った。
「今日の解体は特によかったよ。あんないい肉、どこから仕入れたんだい?」 
「今日の肉はニンゲンです。ニホンから仕入れました。今日は最高級のセイジカの肉を使いました」
「そうか、セイジカか!どうりで腹の肉が黒いと思った。あの脂身がたまらないんだよな」
「お客さん、なかなかの食通ですね」
 店員がそう言うと、客は長いたてがみを軽く振って、
「肉を見ると反射的に唾が出てしまうんだ。肉食動物の性かな」
「うらやましいなあ。僕は魚しか食べられないんでね。それに、あなたには威厳がある、百獣の王というね」
「威厳なら君のほうが上さ。名前にコウテイがついてるんだから」
「威厳があるのは名前だけ。鳥として生まれたのに、ろくに空も飛べないんですから」
「そのかわり、海を自由自在に泳げるじゃないか。それでいいんだよ。ニンゲンはなんでも万能にやろうとして、地球から見放されたんだ。まあ、今ではこうしてわしらの食料になっているのだから、ちょっとは役に立ってるのかもな」
 そう言って、客は豪快に笑った。
「長話して悪かったな。明日もまたくるから、いい肉仕入れておけよ」
 そう言って、客は帰っていった。
 すっかり空になったまな板を見て、店員は呟いた。
「今日もよく売れたなあ。やっぱりニンゲンの肉は売れ筋だな。さて、明日の解体の準備をするか」
 そういって、店員は冷凍庫の扉を開けた。そこにはずらりと並んだニンゲンの体が・・・。


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