僕の中の細い細い線

著:ミコ

暑くもなければ寒くもないある晴れた日。
嫌味なぐらいに、空は青い。
平日の昼間とあって、小さな公園は若い母親と幼児で溢れ返っている。
僕はベンチに座って、彼らの明るいはしゃぎ声を呆然と眺めている、異星人だ。

僕にもあんな頃があったのを覚えている。
毎日が、今思えば嘘のように明るく温かかった。
明日というのは、夜寝れば必ず訪れる、今日と同じ日だった。
僕は子どもで、いつか大人になるけれど、それは「いつか死ぬ」のと同じぐらい実感の湧かない事実だった。
「ともだち」がいた。「せんせい」がいた。「ぱぱとまま」は、いつも優しかった。

あれから何があったんだろう。どうして僕は一人で、こんなところに?
考えれば考えるほど、分からない。僕は努力した。我慢した。順応した。あらゆることに。
けれど今、僕は親に恥じられ、友も持たない、ただの落伍者だ。

赤いゴムボールが、ころころと足元に転がってきて、僕の靴先で止まった。
小さな女の子が、よちよちとそれを追いかけてくる。
拾って手渡してやると、まだ自我を持たないらしい彼女は、僕には一瞥もくれずに、僕の手から
ボールをもぎ取っていった。
元いた場所に駆けていく、女の子の背を眺めながら、僕の中でたった一本、細い細い線が切れていれば、
僕はどうにかしてあの女の子を殺していたに違いないと、確信していた。

そしてもう一本、別の線。こちらはもっともっと細い線だ。
これさえ切れてくれれば、僕は自分を殺せるだろう。
幸せな時もあったのだと、幼い日を思い出しながら、そう悪くない気分で死ねるだろう。
なのにこの線は、2年待っても、3年待っても、切れてはくれなかった。

空を見上げて、眩しさに眉をしかめる。
朝から何も食べていないことを思い出す。
とっくに出なくなっていたあの授業の、テストは明日だったか。
そういえば、楽しみにしていた連続ドラマが、もうすぐ始まる。
僕は立ち上がり、ズボンについた砂をはらうと、その傾いたベンチを後にした。

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