反面教師

著:星新二

チャイムが鳴った。まわりの友達がだらだらと自分の席に着く。私も、友達とのおしゃべりをやめて授業の準備をする。でも、なかなか手が進まない。だって、あの先生メチャクチャなんだもの。
 教室の戸を乱暴に開けて、先生が入ってきた。今日はいつになく不機嫌だ。
「号令!」
 教壇に上がるなり、先生はこう怒鳴った。学級委員が怯えながら号令をかける。
「今からプリントを配る。おとなしく自習しておけ」
 そう言って、先生は面倒くさそうにプリントを配りはじめた。
「先生、プリントが足りません」
「知るか。プリントが足りなかったら、前の教卓まで自分で取りにこい」
 先生は冷たく言った。言われた女の子は一瞬悲しそうな表情をしたが、何も言わずにプリントを取りにいった。口ごたえは許されない。
 プリントを配りおわって、先生は回転椅子に座った。教卓にひじをついて堂々とマンガを読んでいる。私は黙々とプリントを進めている。
 テンポのはやい音楽が教室の中に流れている。先生がウォークマンで聴いているらしい。後ろも席にいる私ですら気になるのだから、前の席にいる子はうるさくて集中できないに違いない。おまけに、マンガが面白い部分になると大声で笑うので、プリントに全然集中できない。
 マンガをいったん閉じて、先生はジーンズのポケットをさぐりはじめた。
「あった、これだ」
 先生はポケットからタバコとライターを取り出した。タバコをくわえて、ライターで火をつける。まもなく、灰色の煙が先生の口から吐き出された。それをまともに吸い込んだ前列の女の子がひどくせきこんだ。ある程度落ち着いた後、彼女は先生に抗議した。
「先生、いいかげんにしてください!授業にタバコを吸うなんて、大人のすることではありません」
「お前、教師に口ごたえするのか?」
 涙を浮かべてまで訴えている彼女を、先生はにらみつけた。教室は緊迫した空気に包まれた。
「教師に口ごたえするのは・・・」
 その後に何か言いかけて、先生の口の動きがスイッチを切られたようにぴたりととまった。そう、スイッチを切られたように。
 いつの間にか、担任の工藤先生が教壇に立っていた。右手には何かのスイッチを持っている。
「みなさん、ご苦労様でした。世の中にはこういう大人がたくさんいるから気をつけるんだよ。次回はもっと大人気ないロボットを持ってくるから、しっかり予習をしておくように・・・」



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