dream

著:斎藤れいり


ふと、雨音で目が覚めた  体を起こして、耳を済ませる
   なんだかはっきりした音は聞こえない
   ベッドからおりて伸びをする
   床はひんやりと冷たく、そっと足の裏に吸い付く
   服を着替えて、外に出る
   寝静まっている街に  ドアのきしむ音が少し響いた
   傘はもっていかないことにする
   雨にうたれながら  少し感傷的になってみたかったんだ
   
   何本もある分かれ道の前に  誰もいないと思っていた道の前に
   ヤツはいた

   「傘は?」
   「壊れた」
   私はまっすぐに嘘をつく
   「そう・・・。」
   地面にあたってはじける雫  どこか雨は優しい
   「お前は?」
   なんとなくヤツに問う
   「すぐ晴れると思ったから。」
   「・・・・・。」
   こんなにも降っているのに  静かに雨は二人をうつ
   このままあふれだして、 終わりまで流れついてしまえば
   きっと泣けるんだろうと思った
   
   目が覚めた  夢だったらしい
   いつも通りに遅刻しそうで、一本道を全力で走った
   なんとか間に合う
   空はあかるく、青い、穏やかな天気
   いつも通りに時間は過ぎていく
   嬉しくもなく、悲しくもなく

   帰り道 雨が降り出した
   折りたたみ傘を持っていて良かった 小さいからあんまり意味ないけど
   あふれだした自分を隠すには充分
   とぎれとぎれの視界  ヤツはそこにいた
   一人、雫を浴びていた
   「傘は?」
   ふとヤツに問う
   「あぁ、壊れた」
   「・・・晴れると思った訳じゃなく?」
   何言ってんだか  よくわかんなくなって目を伏せた
   「・・・・・。」
   「・・・・・。」
   雨音が大きく響く 強く はっきりと
   地とぶつかって、 はじけて はじけて
    
   「少し、感傷的になってみたかったんだ。」

 まぎれもないヤツの声

 雨は降り止むことを知らず 
   あふれては流れ出し 
   最後はどこへ流れ着くのだろうか

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